【完】999本のバラを君に。





放課後になると、すぐに翔太があたしの元へと走ってきた。

「しょ、翔太?!」

「帰るぞ」

「あ、う、うん……」

翔太は、あたしの手首を強く握って走り出す。

あたしは、引かれるまま走った。

走った先は、桜の木。

「しょ、翔太……?」

「わり、痛かったよな……?」

「あ、ううん、平気……」

「ごめんな」

そっと、あたしの頭に手を置く翔太。

その時、少し、距離を離された気がした。


あたしは、グッと唇を噛み締めて。


「あ、あのね……」

「ん?」

「その、悠太君と体育祭実行委員、やることになったよ……」


あたしがそう言った瞬間、翔太は今までに見たことないくらい悲しい顔を見せた。


そして、その顔を見た瞬間、

言わなければよかった、と後悔した。






< 119 / 275 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop