【完】999本のバラを君に。
「真優ちゃん」
声がした方を振り向けば、悠太君が立っていた。
「……兄貴の家、行ったことあんだろ」
「え、うん……」
「今日、執事が車で兄貴の家に迎えにくるはずだから。今行けば、まだ間に合うよ」
「え……」
「……俺、言ったよね。申し訳ないとは思ってるって。本当だよ……」
「うん……」
「あとさ、“兄貴のこと嫌いか”って聞いたろ。兄貴は嫌いだけど、本当は……羨ましいんだ。親父から嫌われても、強く生きている兄貴が。
本気で誰かを好きになった、兄貴が」
下を向きながら話す悠太君。
そして、「資料室ではごめんね」と言って、教室を出て行った。
「真優、行っておいで」
「……うんっ」
あたしは、鞄を持って、走り出した。