【完】999本のバラを君に。
映画は、ついにクライマックス。
白雪姫が、毒林檎を食べて眠っている。
その周りには小人が泣いていて。
「真優ちゃん」
「ん?」
「兄貴に会いたいって思う?」
「……どうしたの、いきなり」
「なぁ、無防備だって思う理由教えてあげよっか」
悠太君はそう言って、あたしをソファに押し倒した。
「普通男の家に来て、同じソファに座ってるなんて、どうぞ襲ってくださいって言ってるようなもんだよ」
悠太君は、そのまま顔を近づけてくる。
テレビも、ちょうど王子様が白雪姫の顔に近づいていて。
「……でも、悠太君はしないでしょ?」
「……なんでそう思う?」
「わかるよ。だって、悠太君は優しいから」
「は? 真優ちゃんさ、俺が資料室で真優ちゃんにしたこと覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
今でも……はっきりと。
あの日のことは、きっと一生忘れない。
悠太君とのことも。
……翔太の、言葉も。