【完】999本のバラを君に。
「あたしら運悪すぎでしょっ」
「よりによって、今日の下校当番が渡部とかっ」
2人で笑い合っていると、気づけばあたしは、自然と翔太の背中に頬を当てていて。
「ねぇ、翔太ーどこの映画館行く気?」
ここからだと、最低でも電車で一駅のところに行かないと、映画館はないはず。
それなのに、もうとっくに駅は通り過ぎている。
「ばぁか、なんのためにわざわざ俺がチャリできたと思ってんの」
「……まさか」
「そのまさか。チャリで映画館までレッツゴー」
……ありえない。
チャリで行ったら、1時間は覚悟しとかないと……。
「ね、ねぇ、今からでも遅くないって! 電車で……」
「嫌だ。真優と2人乗りしたくてチャリできたんだし」
「……確信犯」
あたしは、翔太に聞こえないように、小さく呟いた。
「え? なに?」
「なんでもない」
翔太……あんた、確信犯でしょ、絶対。
そんなこと言われたら、電車でいこう、なんて言えないじゃん。