【完】999本のバラを君に。
放課後になり、ドアから翔太が「まーひーろー」とあたしの名前を呼ぶ。
翔太と下駄箱に向かってる途中、後ろから浦辺君が走ってきた。
「真優、じゃーなーっ」
「あ、うん。ばいばい」
浦辺くんは、ニヤニヤしながら、グラウンドへと走って行った。
浦辺君が見えなくなった瞬間、翔太は歩くスピードを速めた。
……最近一緒にいて、わかったことの1つは、翔太はかなりわかりやすい。
「しょーうたぁ。浦辺君、わざとだって。あたしのこと、いつも“豊崎”って呼ぶもん」
「んじゃ、ずっとそうさせろ」
でも、まぁ……ヤキモチ妬いてる翔太は、わかりやすくて可愛いんだけど。
それに……。
翔太は、前を向きながら、あたしの方に、手を差し出す。
それに、ほら……こうやってちゃんと、あたしを好きでいてくれる。
あたしは、差し出された手を、そっと握った。