【完】999本のバラを君に。
映画が終われば、あたしは翔太に家まで送ってもらった。
「翔太、ありがとね」
「おう。明日、遅刻すんなよ?」
「いつも翔太より早いですけど?」
「はは、だなっ」
翔太に背中を向けた瞬間、「まひろ」と呼ばれて振り返った。
「な……んっ」
振り返った瞬間、翔太の手はあたしの後頭部を抑えていて、唇が重なった。
触れるだけの、優しくて、温かくて、甘いキス。
唇が離れると、翔太は耳をまっ赤にして、照れくさそうにニッと笑った。
「また明日なっ」
そう笑って、自転車をこぎ始めた翔太。
「……バカ」
……好き。
彼が、こんなにも、好き。
自転車をこいでいる翔太の背中が、ずっとずっと大きく、
輝いて見えた。