【完】999本のバラを君に。
イルカのショーの時間になり、その場所に行けば、翔太は一番前に座って。
「ねぇ、ここ水かかるよー?」
「後ろより楽しいからいいじゃんっ!」
絶対濡れると思うんだけど……。
「……まぁ、いっか」
だって、隣にいる翔太が、すごい楽しそうだから。
イルカのショーは15分くらいで終わって。
「……ずぶぬれ」
「悪かったって」
一番前で見てたあたし達は、当然周りの誰よりも濡れていて。
その後も水族館の中をまわってると、あっという間に夕方になり、帰ることになった。
「翔太はさー元カノとか、いないの?」
「んーいない」
「いないの考えてる時間はなんですか」
「いや、ガチでいねぇって。俺、ほとんど学校いってねぇしっ!」
「え……」
「それで怖がられてたっつーか、みんな俺に関わんなかったから。卒業式も行ってねぇしっ」
そういえば……翔太と同じ中学の人って……いない、かも。
「それよりさ、また行こうな! 水族館」
「……うんっ」
翔太……その笑顔は、
寂しさで、できたものですか……?