B(ブス)選がB(美女)に恋する本
お出かけ編
運命の赤い糸なんてセーターがほつれてるだけだ
「亜弥〜」
「んぁ??」
亜弥はけだるそうに後ろから声をかけてきた慎の方へ向く。
「ほら」
慎は、そう短く言うと右の手の平をずい、と差し出した。
何かあるのか、と右手を覗きこむが何も無い。
一体何がしたいんだ、とイライラも込み上げてきていると。
「手出せよ、手!!」
まるで分からなかった亜弥が変だと言わんばかりに慎はしかめっつらを浮かべて亜弥にそう言った。
亜弥も、眉をひそめながらも手を素直に差し出した。
すると、ガシと急に手を繋がれた。
亜弥は熱湯に触れた様に手を引き戻そうとするが慎の手が、それを許さなかった。
「な、何を…っ」
「ちょっと待ってろ」
そう慎が言うと、亜弥の耳には慎のどこかテレビで聞いた事のある曲の鼻歌しか届かなくなった。
小指に何かをされているのは分かるのだが、大きい慎の手の平に隠されて見えない。
しばらくすると、慎ができた、と満足そうなドヤ顔を亜弥に見せ付けた。
何でドヤ顔なんだ、と嫌みをこめたツッコミをしようと思ったが、あえて飲み込んだ。
亜弥は、じとりと睨むだけにして、今度は自分の小指を見た。
糸で、結ばれている。
糸はあまり細くなく、どうやら毛糸の様で赤色だった。
「赤い糸!!これで俺達は夫婦となっ」
慎が言い切る前に、慎は亜弥のジャーマンスープレックスにより強制的に続きを言わせなくした。
亜弥は、気絶した慎を見て深いため息をつく。
そして、何も言わずにつねに持っているカッターで糸を切った後、スタスタとどこかへ行ってしまった。