君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)
今も血が流れ続けている右腕を抑え、ふらつきながらも急いで進むフローラの隣を歩くが、その体を支えてやれないのがもどかしい。
あの男と何度も会っていると言っていたフローラ。
その度に、こんな状態になっていたのかと思うと胸が痛む。
「フローラ」
届かないとわかっていても名前を呼ばずにはいられなかった。
---------------------------------
不思議だ・・・
鬱蒼と生い茂った草はかなりの高さがあって俺でも隠れてしまうほど。
なのに狼が進む先には、まるで草が道を開くかのように左右に分かれていく。
しばらく歩いていると、目の前に2本の大きな木が並んでいた所に出た。
---この木は、もしかして・・・
<入り口は此処だ>
狼が鼻をヒクヒクさせながらフローラを仰ぎ見た。
「────はぁっ、早くしなきゃ・・・」
荒い息を整えながら双樹に向かって手を差し伸べる。
<≪ソーマの森≫の番人よ 異界へと繋がる扉を開き 我を導きたまえ>
フローラが唱えると双樹の間の空間がゆらゆらと揺らめいて別の空間が生まれた。