君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)
やはり、此処は異界への入り口か。
以前、手当てをしてもらって城に帰る時にも似たような双樹が異界の出口にあった。
フローラは迷う事無くその空間に進んで行くが狼はその場から動かなかった。
「シエル?早くしないと扉が閉じちゃうわ」
後に着いて来ない狼に声を掛けたフローラだったが
<我は異界には行かぬ>
狼は首を横に振った。
「何でっ!?」
<我は異界の番人だ。入り口を守らねばならん>
入り口の番人と言った狼。
<早く行け。異界に行かねばここで捕まる>
「シエルはどうするの?」
瞳に涙を溜めて狼を見つめた。
<この入り口が閉じた後、少しの間だが眠りにつく事になる>
その言葉を聞いたフローラは膝を着いて狼の首に手を回した。
「必ずまた会おうね?」
<あぁ、我が眠りから覚めたらお前に会いに行こう>
目を細めた狼はぺろりと大きな舌でフローラの涙を拭った。
<さぁ、早く行け>
「・・・うん」
まだ、血が止まらない腕を抑えて入り口に向かったフローラは
異界の扉が閉じる前に、もう一度振り返って心配そうに狼を見ていた。