君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)
そのまま異界の扉は閉じて元の空間に戻り、まるで何もなかったかのようにサワサワと風が木々を揺らしていた。
それを確認した狼は、また道なき道を進んで行く。
行く当てがない俺も取り敢えずは狼の後に着いて行く事にした。
歩きながら先ほどまでの事を思い出して、フローラが無事に異界に入れた事にホッとする。
あの術者は、もう目を覚ましただろうか・・・
追い掛けて来ないところを見るとまだ気を失っているのかもしれない。
今は触れる事すら出来ないが、次に目の前に現れたら必ず殺してやる────
握り締めた掌からは血が滲んでいた。
暫くすると狼は大きな岩の隙間に入って行く。
その後を何とかついて行けば最初は細い道だったが、段々と広がって奥の方から光が漏れてきた。
「ここは・・・」
いきなり開けたその場所はクリスタルの光が反射して幻想的な雰囲気を醸し出していた。
狼はそのまま進んでクリスタルで造られた台座のような場所に伏せ上を向く。
<ウォーーー・・・>
天井に向かって遠吠えをするとズズズッと壁が動き出し、今来た道を完全に塞いだ。