君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)


「もう、食っちゃった」


「・・・・・」


底なし胃袋のコイツに食い物を見せたらダメだと思った俺は、机の上に置いてあった残りのクッキーの袋を持って立ち上がる。


「あれ?何処行くんだ?」


出口に向かっていた俺の後を着いて来るヴァイス。


「部屋に戻る」


短く伝えれば


「了~解!」


と軽快な声が返ってきた。

ヴァイスが出たのを確認してから執務室の扉に厳重な結界を張る。

此処には、国の重要な書類などが保管されていて、あの女が城に滞在している間は特に注意が必要だから結界を二重に張っておく。


「そろそろ姫さん達の練習も終わる頃か?」


廊下から見える中庭の花時計に視線を向けてヴァイスが呟いた。


「明日が本番だから、そんなに早くは終わらないと言っていたぞ」


朝食を食べながらしていた会話を思い出し、ヴァイスに言えば


「ふーん。それは残念だねぇ?」


ニヤニヤしながら隣の俺を覗き込む。


「何がだ」


「だって、明日は早朝から王子は出発しちまうし、姫さんも禊の為に見送りも出来ないだろ?」


「・・・・・」


面白可笑しそうに話すコイツを相手にするだけ時間のムダだと思った俺は、無視して歩いていた。



< 282 / 393 >

この作品をシェア

pagetop