君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)

広い中庭を見渡してみるが、一向にフローラの姿は見えない。


「何処に行っちまったんだ?姫さんは・・・」


歩を進めながら思い当たる所を片っ端から探す。


「おーい!姫さ~ん?」


草むらを掻き分けて探しているヴァイス。


---そんな所にいるわけねぇだろ・・・


口には出さず冷ややかな視線を向けていると、視界の端に見えた大木。

以前、フローラが大木の精霊と触れ合っていたのを、ふと思い出す。


「ヴァイス!」


ヴァイスの名前を呼んで、駆け出した。


「えっ!?王子っ?」


ヴァイスも俺の後を慌てて追い掛けて来る。

あの大木の近くには隠れた花園があって、一度だけフローラを連れて行った事があった。

もう、居るとすればそこしかない。

大木を横目に通り過ぎ、花園の入り口に辿り着く。


「・・っ・・急に、どうしたんだよ?王子」


ハァハァと息切れをしながら着いて来たヴァイス。

それには答えずにそっと足を踏み入れれば・・・

ベンチの上で膝を抱えて蹲るフローラの姿。


「───見つけた」


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