君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)


「王子は自覚がねぇかも知れねぇけど、よく笑うようになった」


「・・・・・」


「まぁ、姫さん限定だけど・・・」


そう、言いながらフローラの寝顔を見る。

「すげぇ進歩だよ」と付け足して白い歯を見せた。


「・・・・・」


全く意識した事がなかったが・・・幼馴染のヴァイスがそう感じるなら、そうなのかもしれない。

歩きながら彼女を見れば、また自然と頬が緩む。

それを見ていたヴァイスは微笑んだままで、もう何も言わなかった。

フローラを抱いたまま中庭を抜けて城内に入れば、挨拶をしてくる使用人に騎士達。

皆、以前のような驚きは無いようで笑顔で見送っている。


東棟の前を通り過ぎると、前方に騎士数人の姿が視界に入った。

視線を向ければ騎士に囲まれて歩いて来るのは父上で。


「陛下」


隣を歩くヴァイスもそれに気付いて声を掛けた。


「おぉ、ロックとヴァイスか・・・」


にこやかに話し掛けてきた父上だが、俺の腕の中のフローラを見ると表情が強張った。


「父上?」


俺が声を掛けるとハッとして笑顔に戻る。


「あぁ、すまん。来客があるから、また後でな」


そう言うと騎士達を連れて≪謁見の間≫へ向かった。

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