君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)


「よく、我だとわかったな」


面白そうに目を細めた人狼。

それに答えるように、横たわっていた体をゆっくりと起こした王子の瞳が人狼を捕らえた。


「フローラが関わっている狼と言ったら、お前しかいないだろう」


王子の言葉に僅かに口角を上げる人狼。

二人の会話から、どうやら顔見知りらしい。


「俺を助けてくれたんだな・・・ありがとう」


---ん?空耳か??


その言葉を聞いた俺の耳がおかしくなったのかと思った。
まさか、王子の口から姫さん以外の者に「ありがとう」なんて言葉が出るなんて・・・


「礼には及ばぬ。礼を言うなら、我にではなくフローラに言え。」


「───あぁ。」


人狼に答えながら、手をグー、パーさせて感触を確かめている王子が返事をすれば


「病み上がりで悪いが、直ぐに行動せねば手遅れになるぞ。」


緊急を伝える人狼。


「わかっている。」


それに短く答えた王子は、ゆっくりと立ち上がった。


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