君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)
出発(たびだち)
---
-----
-------
(side:ロック)
「後は任せたぞ。ニコル」
すれ違い様に、ニコルに声を掛ければ
「俺には無理だよ、兄さん!」
顔面蒼白になって訴えてくるが、その声に足を止める気持ちの余裕が無かった。
部屋に入る直前にもヴァイスの声が耳に届いたが、振り向く事無く扉を閉める。
二人には悪いと思ったが、今の俺には誰かと会話を交わす余裕も時間も無い。
『百歩譲って、フローラを傍に置くのは認めよう。だが、公の場に姿を見せる事と、あの者との間に子を残す事は認めん』
父上の言葉を思い出すだけで怒りがこみ上げてくる。
「・・・くそっ!!!」
扉横の壁に拳を叩きつければ、パチパチと俺の体から放たれている魔法の力に、部屋中の結界が反応して火花を散らす。
そのまま壁に背を預け、前髪をかき上げた時。
怒りが収まらない俺を冷静にしてくれたのは、ふんわりと香ってきた匂い。
部屋を見渡せば、ベッド脇のテーブルに置かれた物が目に映る。
近付いて手を伸ばせば
「・・・・・」
フローラが作った焼き菓子が乗っていた。
それを一つ摘んで口に入れれば、優しい甘さが口内に広がって、思わず笑みが零れる。
「フローラ・・・」
---そうだ・・・
俺は、こんな事をしている場合じゃない。
-----
-------
(side:ロック)
「後は任せたぞ。ニコル」
すれ違い様に、ニコルに声を掛ければ
「俺には無理だよ、兄さん!」
顔面蒼白になって訴えてくるが、その声に足を止める気持ちの余裕が無かった。
部屋に入る直前にもヴァイスの声が耳に届いたが、振り向く事無く扉を閉める。
二人には悪いと思ったが、今の俺には誰かと会話を交わす余裕も時間も無い。
『百歩譲って、フローラを傍に置くのは認めよう。だが、公の場に姿を見せる事と、あの者との間に子を残す事は認めん』
父上の言葉を思い出すだけで怒りがこみ上げてくる。
「・・・くそっ!!!」
扉横の壁に拳を叩きつければ、パチパチと俺の体から放たれている魔法の力に、部屋中の結界が反応して火花を散らす。
そのまま壁に背を預け、前髪をかき上げた時。
怒りが収まらない俺を冷静にしてくれたのは、ふんわりと香ってきた匂い。
部屋を見渡せば、ベッド脇のテーブルに置かれた物が目に映る。
近付いて手を伸ばせば
「・・・・・」
フローラが作った焼き菓子が乗っていた。
それを一つ摘んで口に入れれば、優しい甘さが口内に広がって、思わず笑みが零れる。
「フローラ・・・」
---そうだ・・・
俺は、こんな事をしている場合じゃない。