君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)
一瞬で、俺の視界から消えた男。
ハッとした時には、数メートル先の木に体を打ち付けられていた。
「ぐぁっ!!」
背に受けた衝撃で、苦しそうな声を上げる男の目の前には
「その口、二度と利けぬようにしてやろうか?」
今まで俺の後ろに居たはずの王子が、男の喉元に魔剣の刃を押し当てていた。
「くっ・・・」
苦痛に歪むその顔が、王子に視線を合わせた途端に「ひっ・・・!!」と悲鳴を上げて青褪めていくのが分かる。
耳に届いた王子の声の低さと、その手にしている魔剣から、マジ切れしているのだと簡単に推測できた。
魔剣・・・
王子が手にしているそれは、読んで字の如く、強力な古代魔法が施してある剣の事。
子供の頃から王子と一緒にいる俺ですら、その魔剣の本当の威力を知らない。
普段、滅多に魔剣を鞘から抜く事の無い王子。
それもその筈で、大体の相手は魔法で片が付くから魔剣を抜く必要が無い。
その王子に魔剣を抜かせたあの男は、ある意味すげぇ。
「余計な事は話すな。聞かれた事だけ答えろ」
王子の威圧的な声に「はい・・・」と小さく答えた男の蟀谷からは、一筋の汗が流れていた。