君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)
俺の目の前を飛び回るそれは、人差し指ほどの大きさ。
人間のような容姿で、背中にはトンボのような羽が生えていた。
目を見開いて固まっていると、隣から手が伸びてくる。
「おいで シルフ」
フローラが呼ぶと、吸い寄せられるように近づくそれ。
「この子は、風の精霊でシルフって言うの」
「風の精霊だって!?」
思わず、声がでかくなる。
精霊は一般的に知られてはいるが、あくまでも伝説や御伽噺として。
「うん。友達なの」
嬉しそうに話すフローラは、指に乗せたシルフを俺の目の前に差し出してくる。
「もしかして、君は精霊使いなのか?」
改めて、精霊をまじまじと見ながら聞く。
遥か古の時代に精霊使いがいた事は古文書に記されているが、実際に精霊使いに会った事はないし、聞いた事もなかった。
でも、目の前にいるのは間違いなく精霊と呼ばれるそれ。
「えぇ そうよ。そう言うあなたは魔法使い?」
言われてみれば、まだ名前も名乗っていなかった事に気がついた。
「あぁ、俺はロック。さっきは命を助けてくれてありがとう」
あの火竜から助けてくれたフローラに礼を言う。
この世界で魔法使いは珍しくない。
騎士になれば、少なくとも護身術程度の魔法は習う。
「どういたしまして。でも、あのエンシェント・ドラゴンに戦いを挑んだのは無謀だったわね。
もう少しで命を落とすところだったのよ?」
呆れたように話しながら、テーブルへ戻って行くフローラ。