温め直したら、甘くなりました
「……正直に話すしかなさそうですね」
「ええ。ごめんなさいね、せっかく安西さんにも手伝ってもらったのに……」
「いえ、いいんです。それより先生に、あれを」
安西の言葉に茜は頷き、キッチンに引っ込んだと思ったら何か平べったいものを手にこちらへ戻ってきた。
二人の会話が“あれ”で成立することに苛立ちを覚えながら、茜の持っているものに注目する。
……なにかのプレゼントのようだ。水色の包装紙に、黄色いリボンが巻かれている。
「これ、昨日安西さんと一緒に選んだの。集が作家デビユーして今日で10年だそうね……その記念に、サプライズパーティーをするつもりだったのよ?」
茜の言葉が予想外すぎて、一瞬脳の回路がショートした。
これは……俺へのプレゼント、ということなのか?
答えを求めるように安西を見ると、奴はにんまり笑って頷いた。
そして目の前の茜は、その丁寧にラッピングされた箱を俺に差し出しながら、はにかんだような笑顔を浮かべている。
「浮気じゃ、なかったのか……」
へなへなとその場に座り込む俺。茜が目線を合わせるようにしゃがんで、俺の額を人差し指でつついた。
「馬鹿ね……そんな勘違いをしてたから今朝も元気がなかったのね?浮気を疑うなんて、ひどいじゃないの」
「ご、ごめん……でも、よかった……大切な人を二人同時に失うかと思った……怖かった……」
俺は眼鏡を外して、安心して滲んでしまった涙を服の袖でごしごしと拭った。