温め直したら、甘くなりました
初めての料理
「先生、それは自業自得ですよ」
「うるさい、解ってる。原稿渡したんだからさっさと帰れ」
「先生が〆切を守るなんて、よっぽどあの綺麗な元奥様とヨリを戻したいんですね。原稿、確かに預かりました」
「元じゃない!元じゃ―――!」
ペンを投げつけようとした先にはもう、俺の担当編集安西の姿はなかった。
学生時代にラグビーだかアメフトだかをやっていたからか、全くあいつは俊敏だ。
……さて。
仕事に一区切りついたことだし、家に帰ろう。
ギッと音を立てて椅子から立ち上がった。
丸めた原稿用紙がいくつも床に転がっているのを避けながら、俺は仕事場を後にする。
向かうのはもう“新居”とは言えない茜との愛の巣。
二人で暮らすために借りたマンションだったが、俺は帰るのが面倒で仕事場に寝泊まりするばかりだった。
どうして、茜なら大丈夫だと、思ってたんだろう。
もっと早くにこうしていれば、二人の仲ももう少しましな状態だったかもしれないのに……