温め直したら、甘くなりました
「茜!!俺にもできた!」
「……はいはい、よかったわね」
子供みたいにはしゃぐ俺をあしらうように言いながら、茜も笑ってくれた。
店内はだしのいい香りが立ちこめているし、なんだか幸せな気分だ。
そして幸せだとまたもや欲の出てきてしまう俺は、茜にダメもとでこんなことを言ってみる。
「……ご褒美は」
「…………?」
「茜のキスがいいな、なんて」
調子に乗るなと言われても構わない。でも、言わなきゃ始まらないと思うから。
「……それを言うなら、私の方こそ報酬が欲しいわ」
ま、まさか……金を取る気か。
妖しげに微笑む茜を見ていると、それも考えすぎじゃないような気がしてくる。
「――――これで、我慢してあげる」
ふわりと、懐かしいにおいがした。
黒くて艶やかな長い髪の手入れのために茜がつける、椿油の香り。
そして唇には、生温かい感触が……