温め直したら、甘くなりました
――ようやく“これはキスだ!”と脳が理解したときにはもう唇は離されていて。
舌を入れる暇もなかったから、ぼんやりしてしまった自分を少し恨んだ。
でも、唇に残る熱の名残が、そこに茜の唇が重なったことは夢じゃないって言ってる。
「……茜。俺とやり直す気になってくれたのか?」
何事もなかったかのように使った鍋やざるを片づけ始める茜にそう、聞いてみる。
けれど返ってきた返事は期待通りとはいかなかった。
「ううん、キスがしたくなっただけよ」
…………まだまだ、か。
だけど大きな進歩だと思う。
今回は久しぶりのキスだったからすぐに反応できなかったが、次にそのチャンスが来たときには、茜を骨抜きに……
とろけそうな顔で俺のキスを受け止める茜を想像してひとり目を閉じていると……
「帰らないなら、鍵閉めるわよ」
いつの間にか帰り支度を済ませた茜に、閉じ込められそうになっていた。