温め直したら、甘くなりました
長い石段を上がって、少しくすんだ朱色の鳥居をくぐると、夕闇をさらに薄暗くする木々に囲まれた、広い境内に到着した。
子どものころは、お正月よくここに初詣に来たものだけど……
両親が亡くなってからは足を遠ざけてしまっていた。
だっていつも“家族みんなが健康で居られますように”と願っていたのに、父と母が仲良く経営していた小料理屋を火事にして、二人の命を同時に奪うなんて、神様はひどすぎると思ったんだもの。
大人になった今では、あれが母の天ぷら油の不始末だったと、受け入れられるようになったけれど……
私は石畳の参道をゆっくりと進み、小さな社殿の前で手を叩いて目を閉じた。
――神様、私が二人の遺志を継いで始めたお店も、なんとか軌道に乗りました。
結婚生活は上手くいかなかったけれど、お店のことだけはどうかこれからも、守ってくださいね。
お参りを終えて引き返そうとすると、一人の男子学生がこちらに近づいてきた。
ああ、あの学ランは確か、私の通っていた中学の……
などと懐かしむ気持ちは、その学生の顔を見たらどこかへ吹き飛んでしまった。
「まさか…………集?」