温め直したら、甘くなりました

「なんなの、その格好……」


「今日はとことん当時を再現してやろうと思って。茜の分もあるぞ」



手に持っていた紙袋をがさがさ鳴らして集が取り出したのは……私の中学の、セーラー服。



「いったいどこでこんなもの手に入れたの?」


「安西と俺で手分けして、茜の母校の制服を持っている奴がいないか当たりまくった。だから昨日は家に帰れなかったんだ。
こういうとき有名な小説家でよかったと思うよ、俺のファンだとかいう若い女性が快く譲ってくれた」



……なんなの、その行動力。

そして、もしかして私はこれを今から着るの?



「……人が来ないか俺が見張っててやるから早く着替えろ」


「いやよ、こんな外で着替えるなんて。寒いし」


「スカートはそのジーンズの上から穿いて、後で脱げばいい。上は、一枚脱いだからって下着じゃないだろ」


「ああもう、わかったから人が来ないかしっかり見張ってて!!」



もう、やけくそだ。


私は何も考えないようにものすごい速さで着替えを済ませ、今年で三十を迎える私には明らかに無理のあるセーラー服姿になった。

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