温め直したら、甘くなりました

「――茜。今別の男のこと考えただろ」



集に顎を掴まれて、我に返った。



「……少しね。ファーストキスは、涙の味がしたなぁって」


「なんだよ、それ。嬉しくて?」


「ううん、あまりに切なかったから」



私が言うと、眼鏡の奥の集の瞳が一瞬だけ揺れた。

そしてその瞳を細めると、こんなことを言う。



「嬉しいファーストキスの記憶になら勝つ気満々だったけど……茜が泣くほど切ないキスだったなら、自信なくなってきた」


「……今さら何言ってるのよ。こんな恥ずかしい格好までさせといて」


「ごめん」


「ごめんじゃないわよ。謝るくらいなら……勝って、見せて?」



ひゅう、と私たちの間を風が駆け抜けた。私は寒いと言って、集の学ランを掴む。



「茜……」



集の唇が、ゆっくり降りてきた。
同時にぎゅっと抱き締められ、私たちの間に冷たい風の通る隙間はなくなった。


押し付けて、挟んで、柔らかく、噛みつかれて。

そうして出会った舌は既に熱く濡れていて、凶暴だ。



「ふ、ぁ…………ん」



いい大人の男女が、似合いもしない若い頃の制服に身を包んで、なにをやってるんだろう。


馬鹿みたい。恥ずかしい。

なのに、やめられない。止めたくない。

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