温め直したら、甘くなりました

「じゃ、俺は帰りますけど……奥さまも、さすがにこの雨では来ないと思いますよ……?」


「お前が茜の何を知っている。茜は絶対来る」



最近やっと、茜の心が和らいできたんだ。今そこに入り込まないでどうする?


最近頻繁にテレビで見かける熱い予備校講師の言ってることがやっと理解できた気がする。


いつ花見をする?――――今でしょ。



一人でうんうんと頷いていると、俺と同じく場所取りをしていた者たちが、周りに敷いてるシートをどんどん片づけていく。


……これくらいの雨で中止にするなんて、軟弱な奴らだ。

雨と桜、それもまた情緒があるじゃないか。降り方がもう少し弱くなれば、きっと花見を楽しめる。



――茜との約束は、ちょうど昼の12時。

腕時計の水滴を指ではらって時間を確認すると、約束の時間を5分過ぎている。


きっと、雨で歩きにくいんだろう。5分くらい、どうってことない。


そう思い続けて、思い続けて……



次に時計を見たとき、短針は3の文字を指していた。

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