温め直したら、甘くなりました

「……遅いな」



そう呟いてから、体がぶるりと震えた。どうやら雨で冷やされてしまったらしい。


何か食べて体を温めよう……そう思って弁当箱を開けると、俺が気合を入れて作ったいなり寿司と太巻きがきれいに並んでいた。


……やっぱり、茜と一緒に食べたい。


それに、食べかけでは俺の料理の上達ぶりがあまり伝わらない気もするしな。

俺は弁当箱を閉めて、再び茜を待つだけになった。



……まさか、事故にでもあってるんじゃあるまいな。

いやいや縁起でもない。もしそうなら俺に一番に連絡が来るはずだから、違うよな……


震える体を抱き締めるようにして膝を抱え、さらに一時間が経過したとき……


桜の木の向こうから、茜らしき人物が歩いてくるのが見えた。


……ほらみろ、安西。茜はちゃんと来たじゃないか。

俺を見る目が、まるで不気味な物でも見るように細められているのが何故なのかは、解らないが……

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