温め直したら、甘くなりました
「いつまで経っても帰って来ないからまさかと思って来てみたけど……何してるの?」
「何って……茜と花見をするためにずっと待ってたに決まってるだろ」
「ずっと、ここで……?」
「そうだ。誰かにこの場所を取られたら困るからな。一歩も動かずに待っていた」
さ、ここに座ってくれ。そう言って自分の隣のスペースに手を置くと、シートの上にできた水たまりにその手がばしゃっと入ってしまった。
「……バカじゃないの?」
茜はそこに座ろうともせずに、呆れた目で俺を見つめる。
「バカとはなんだ。弁当だってちゃんと朝早く起きて作ったんだ。ほら……」
ぱかっと弁当箱を開けて自信作を見せる。
でも茜は驚きも喜びもせず、ただ深いため息をついた。
「キッチンの惨状は、そのお弁当のせいね」
惨状……?
「そこら中に失敗した海苔やら酢飯やらは散らかしたまま。余った卵焼き、かんぴょう、椎茸をラップもかけずに放置。お皿は必要以上に使いすぎてるのに、洗ってもいない」
茜に言われて、はっとした。
後片付け……
弁当の完成が嬉しすぎて、俺はそんな行為のことはすっかり頭から抜け落ちていた。