温め直したら、甘くなりました
「それは……ごめん。帰ったらちゃんと自分で片づけるから……」
「もうとっくに私が片づけたわよ。いいから、早く帰りましょう。こんなところにずっといたら、風邪を引くわ」
帰る……?
いつ帰る?――――今でしょ。……いやいや、違う。まだ肝心の花見をしてないじゃないか!
「茜、ちょっと待て」
「なによ……きゃ!」
その細い腕を掴んで引き寄せると、茜は体のバランスを崩してシートに尻餅をついた。
もちろん、そこは水浸しだ。
「……こうなったら、とことん濡れないか?」
俺は邪魔な眼鏡を外しながら、茜に提案した。
「……最悪のデートね」
そう言いつつも、茜は観念したように濡れた髪をかき上げて微笑んでいる。
「でも印象には残る」
俺は弁当を広げて、用意していた日本酒を紙コップに二人分注いだ。
「雨混じりのお酒か……悪くないかも」
「……だろ?」
俺たちは紙コップを傾けて、音のしない乾杯をした。