温め直したら、甘くなりました
その後で集は、ちゃんと私の身体を拭いてくれて(途中で性的な悪戯をすることもなく)、着替えを済ませるとミルク粥まで作ってくれた。
ミルク粥の作り方なんて教えたことないのに、いつの間にできるようになったんだろう……
そう思いながら、集の手によって口元に運ばれたスプーンで、一口食べてみる。
「……美味しい」
どこか懐かしいミルクの穏やかな味に、ほんのり感じるチーズの風味。
職業柄、レシピはどんなものだろうとあれこれ思いを巡らせる。
「これ、どこで覚えたの?」
「解らないのか?あの本棚に詰まったノートの中にレシピがあるのに」
集が指差したのは、部屋の隅にある木製の本棚。
ぎゅうぎゅうに詰まった大学ノートには、私が両親から受け継いださまざまな料理のレシピが書いてあるのだ。
「そっか、これ……お母さんの味、なんだ」
私は集に頼んで、もう一口すくってもらう。
話を聞いた後で食べたその味はより懐かしい気持ちを私の中に呼び起こして、じんわりとあたたかい気持ちになる。