温め直したら、甘くなりました
「何言ってるのよ、急に……」
「急じゃない。高校時代にほかの女の子と付き合ったこともあったけど、帰ってきて俺はやっぱり茜が好きだと思った。
だけど茜は夢に向かって頑張ってる時期だったし、伝えるのは遅くなってもいいと思ったんだ。
茜が店をちゃんとひとりでやってけるようになって、俺も一人前の八百屋になって、その間に金貯めて……そしたら結婚しようと……思ってたのに」
初めて聞かされる話ばかりだった。
聖司はいつも人が良さそうに笑ってて、年は同じだけど頼りになるから、兄のように私を支えてくれて……
けれどそれは、恋愛感情があったからなの……?
「いきなり現れた奴と結婚するなんて、そんなのないだろ……俺の方が茜のこと、ずっとよく知ってるのに」
「……聖司。こういうのって理屈じゃないと思う……」
「――解ってる。解ってるから、俺も理屈を無視する。ついでに、道徳も」
ぐい、と腕を引かれて、私は聖司の腕の中に倒れ込んだ。
昔よりも頼もしくなった身体が、私を包み込む。
「好きなんだよ。今も昔も変わらず、茜だけを……」
「せい、――――」
無理矢理に顎をつかまれて、噛みつくようなキスをされた。
ファーストキスとは違った、欲望混じりの激しいキス……
私にとってはもう聖司とのことは過去だから、力では敵わないと解っていても抵抗を試みた。
けれど一瞬唇が離れてもまたすぐに奪われてしまう。
その繰り返しで私が諦めかけた頃……店の引き戸が、開く音がした。
準備中に店の正面から堂々と入ってくる人物を、私は一人しか知らない。