温め直したら、甘くなりました
初めての浮気
――占いは、信じない方だ。
運命という大きな流れみたいなものはあるかもしれないが、それを知ってるのは神だけだと思う。
だから朝からどの星座が一番だとか、ラッキーアイテムはなんだとか、そんなのどうでもいい情報なのだ。そうさ、どうでもいい。
たとえ俺の星座……天秤座が12位だとしても。
「あはは、今日の集最下位じゃない。外出せず家に居るのが吉。うっかり外に出ると見たくないものを見てしまうでしょう……だって」
見たくないものってなにかしらね、と朝食の食器を片づけながら茜がけらけらと笑う。
俺はソファでコーヒーを飲みながら、くだらない、と鼻で笑う。
「日本全国に天秤座がどれくらい居ると思ってるんだ。こんなのを気にする奴の気がしれない」
「ま、そうよね。どうせ見たってすぐ忘れてしまうし。あ……開運アイテムはおにぎりですって。作ってあげてもいいけどどうする?」
「今日の昼は人と会う約束がある。外で食べるから大丈夫だ」
「そう。それならいいけど」
茜の風邪はすっかり良くなり、今日から店を開けるらしい。
あの素直で積極的な茜が消えてしまったのは残念だが、健康に越したことはない。
まだまだ茜の心を解きほぐす作戦は残っている。
風邪も治ったことだし、そろそろそれを始動させるか。