温め直したら、甘くなりました
なぜ、担当編集も交えずに俺たちが二人で会っているのかというと、今日の食事は仕事とは全く関係がないからだ。
学生のころから俺のファンだという黒田凜子が、自分の担当を通じて安西に連絡を取り、俺に会わせてくれと頼み込んだらしい。
いつもの俺だったら絶対断るところだが、この若くて可愛らしい(安西情報では歳は24、大学時代にミスなんとかに選ばれたらしい。しかし、俺の好みではない)彼女なら、茜が嫉妬する可能性が充分にあると思ったからだ。
――――そう、何を隠そう次なる作戦とは、茜にやきもちを妬かせよう作戦なのだ。
「あのう、二階堂先生はご結婚されてるんですよね?」
「……先生ってのはやめてくれ。きみだって立派な作家だろう。結婚は、している」
「じゃあ、集さん。奥さんはどんな方なんですか?」
……そこは普通二階堂さんではないのか。
いきなり名前で呼んでくる辺りに、彼女の下心をびしびし感じる。
でも、その方が目的を達成しやすいだろう。
茜に嫉妬して欲しいがために食事会の最後に彼女と並んで写真を撮り、欲しくもない連絡先を交換するという目的を。