温め直したら、甘くなりました
「俺の妻は……俺より二つ年上で美人で気立てがよく、料理が上手い上に床上手。非の打ちどころのない女ですよ」
話しているうちに、オードブルが運ばれてきた。
無造作にフォークを突き刺して食べてみると、どれも見た目は綺麗だがなんとも寝ぼけた味だった。
高級料理はやはり俺の口には合わないらしい。なぜ、野菜をコンソメのゼリーで寄せるのだろう。
俺が一番好きなゼリーは、みかんゼリーだ。
「そっか……じゃ、私なんて全然勝てないですよね」
わざとらしく切なげにまつ毛を伏せた黒田凜子。
俺の嫌いなゼリー寄せをフォークでつついてぐちゃぐちゃにしている。
……いよいよ下心を本気で出してきたな。いくら男の好きそうな表情を作ったって、そのフォークの使い方で台無しだぞ。
「きみと妻とは別の人間だ。勝ち負けなんて考えるだけ無駄だよ」
俺は優しいのか冷たいのか解らないことを言って、彼女を煙に巻く作戦に出た。
はっきり突き放したら写真を撮ってもらえなくなるかもしれないし、気を持たせて面倒なことになっても困るから。