温め直したら、甘くなりました
「……集さんは、一夜限りの恋ってありだと思いますか?」
昼間なのにワインを注文し出した黒田凜子は、今度は酒の勢いにまかせてそんなことを言い出した。
まさか、ホテルのレストランを指定したのは食事の後あわよくば俺と……なんて思ってるんじゃあるまいな。
……今回は曖昧に返事をするのは危険だ。
「人によっては、あるかもな。俺にはないと断言できるが」
「……つまんない」
そう呟いて、結構な量の赤ワインが入っていたグラスを一気に傾けた黒田凜子。
あまり酔われても対応に困るな……
早くお開きにしたいがまだコースは肉料理。デザートが出てこないと帰れない……
「もう、最後の手段に出ちゃおうかな……」
宙を見ながらそう呟いた彼女。なんだか背筋がぞくっとしたが、最後の手段とは一体……
「……ここ、個室でよかったぁ」
そう言って、彼女は俺の視界から消えた。
どこへ……と思ったが、この部屋で隠れられる場所なんて、テーブルクロスの中くらいしかない。
そんなところで何を……
心底不思議に思っていると、ふわりと太腿に手が置かれる感触がした。
まさか――――
「奥さんがどれだけ上手いのか知りませんけど……私も結構、自信あるんですよ?」
テーブルクロスの中から顔を出した黒田凜子が、悪戯っぽい瞳を輝かせてそう言った。