温め直したら、甘くなりました
「もしかして、茜のファーストキスの……」
「……よく御存じで。あの時からずっと俺の気持ちは茜にあります。あなたが茜と出逢うよりもずっと前から……」
片山聖司が挑戦的に俺を見つめた。
ふん、ファーストキスは俺が上書きしちゃったもんね。ざまーみろ。
……と、舌を出して悪態をつきたいところだが、俺も大人だ。
もう少しカッコいい台詞で締めるとしよう。
「愛の深さは時間とは関係ない。きみがどれだけ長い年月茜を想っていたとしても、俺にはそれに勝てるほど濃密な愛がある」
「……濃密な愛、ですか。小説家の割に普通の表現をするんですね。まあ、口ではなんとでも言えます。要は茜がどっちを選ぶか、でしょう」
……こいつ。俺のこと口先だけみたいに言いやがって。
俺は茜に対して本当に濃密な……いや、香ばしく焦がしたキャラメルソースのような深い味わいと甘さ、そして良質な卵をたっぷりと使った薄黄色のカスタードのような優しさを持ったまるでプリンのような愛を捧げているというのに。(……この表現もイマイチだな。安西なら即刻ボツにするだろう。なんだよ、プリンのような愛って)