温め直したら、甘くなりました
唇を押し付けながら舌で茜の結ばれた唇をノックすると、そこはゆるりと開いていとも簡単に俺の侵入を許した。
舌先に触れただけでびくりと身体が震え、俺の服を掴む手に力が入ったのが解る。
うっすらと目を開けると眉を八の字にしてキスに酔いしれる茜が見えて、俺はもう充分だろうなと思った。
きっと片山聖司はもう理解したはずだ。自分がキスをしたときの茜と、今の茜の違いを。
そろそろ終わりにしようと思うのに、絡み合う舌は離れたがらない。
俺たちみたいに抱き合う、小さい俺と、小さい茜。
そのふたつが溶け合って、一つのものになってしまいそうなほどだ。
それでもようやく濡れた唇を離すと、茜の口から「あ……」と物欲しそうな声が漏れたのを聞いて、片山聖司はついに白旗を上げた。
「……もう解りました。すげー悔しいけど、そんな茜の姿は見たことがないし、そんないい声出すのも知らなかった。
俺だってさっき自分のできる最高のキスを出し尽くしたけど、茜は無表情にそれを受け止めてた。……俺の、負けだ」
「潔い男だな。……俺は不思議ときみが嫌いではない気がする」
俺はまだぽうっとした表情の茜を椅子に座らせて、片山聖司の正面に立った。
「……なんとなく解ってましたから、振られることは。朝の占いも最下位だったし……つーか見たくないものってこれか……」