温め直したら、甘くなりました
「……ああ。明日はいつもの時間でいい。そろそろ茜が帰ってくるから切るぞ……って茜!?」
ようやく、入り口で立ち尽くす私に気付いた集が、携帯をぼとりと床に落とした。
『先生?先生?』
安西さんの声がするその二つ折り携帯を私はゆっくりと拾い上げ、横にして両手で持つ。
そしてにっこり微笑んでみせると、その携帯が普段折り曲がらない方向へと力を入れ、ひと思いに折ってやった。
邪魔な安西さんの声は、聞こえなくなった。
「あ、かね……?どうした、お前がそんな乱暴するなんて……」
「今日のお昼、どなたと会ってたのかしら?」
「今日……?ああ、仕事関係だ」
「男性?女性?」
「一応、女性だが……」
「一応?でも身体は反応したんでしょ?立派な女性じゃない」
「――!!茜、まさかさっきの電話聞いて……」
うろたえる集を見て、余計に苛立ちが募った。やっぱり、やましいことがあるんだ。
女性絡みで、身体絡みの。
ふーん、集のくせに、生意気。