温め直したら、甘くなりました
「……あのときの離婚届はどこ」
最近集にやられっぱなしで、丁度反撃したいと思ってたところだった。
今がその好機だと判断した私は、氷点下の視線で彼を睨みながらそう言った。
「……なんで」
「浮気する男は嫌いよ。もう本当に別れましょう」
「浮気なんて………ああ、さっきの電話のせいか。あれは――」
「言い訳は聞きたくない!」
ぴしゃりと集の言葉を遮り、私は不機嫌そうに顔をふいと背けた。
さあ、前みたいに泣いてすがりなさい。あの時の集、情けない顔だったけど、結構可愛かった。
――しかし私の思いに反して、集は一向に泣きついてくる気配がなかった。
ちらりと横目で彼の方を窺うと、なんともだらしない顔でにやけながら私を見ていた。
「……なによ、その顔」
「いや……失敗したかと思った作戦が今になって効果を発揮してきたのが嬉しくて」
「作戦……?」
「その女性と会ったのは、茜を嫉妬させようと思ってのことだ。そういう風に怒った顔が見たくて、わざとな。
ハプニングはあったが浮気はしてないと誓える。俺には、茜しかいない」