温め直したら、甘くなりました
つんとする私をなだめるように頭を撫でられ、怒った表情を続けるのが難しくなってきた。
……悔しい。こんな手のぬくもりひとつで丸め込まれるなんて。
なんだか立場が逆転しているみたい……集が私を振り向かせようとしていたはずなのに、私の方がわがままな子供みたいになってる。
「……風呂、沸いてるよ」
「……ありがと」
「湯布院の温泉の素を入れてみた」
「疲れが取れそうね」
「シャンプーも減ってたから詰め替えた」
「…………」
……どうして、今日は言ってくれないの?
今日なら、首を縦に振るのに。
自分からは言えない。言いたくない。
だから今度は真夏日の視線で、集を睨んだ。
「……すごいな。今日はもう一つの作戦も達成できそうだ。占いなんてやっぱり嘘っぱちだ」
私の視線の意図が解って嬉しそうに呟く集に、私もふっと笑顔になってこう言った。
「たぶん日付が変わったからよ……朝になったら天秤座の運勢を見るのが楽しみね」
「きっと“好きな人と一緒にお風呂に入れるでしょう”だな」
「朝からテレビでそんなこと女子アナが発言したら問題よ」
クスクス笑いながら、私たちは仲良くお風呂の準備を始めた。
私の下着を選びたがる集に、変態!と軽く平手打ちをくらわす……そんなくだらないことが楽しくて、新鮮だった。