温め直したら、甘くなりました
「まさか、茜があんなことまでしてくれるなんてな……」
二人で湯布院温泉(の素が入ったうちのお風呂)に浸かっていると、集がしみじみと呟いた。
未だに射精したばっかりみたいな呆けた顔をしているところを見ると、さっきの行為に相当感動したらしい。
集がそんな状態だから、私は自分に触れてもらうタイミングを失ってしまった。
身体を洗った時にぬるりとした足の間をそのまま洗い流すのはなんだか切なかったけれど、だからってどうしてくれとも頼めなくて。
そして今は広い湯船で向かい合って、つま先だけが触れ合っている状態だ。
もう少し、近づきたいと思うのに……素直に口にすることができない。
集が“おいで”って言ってくれれば、一番いいんだけどな。
「茜」
「なに?」
「……おいで」
…………うわ。なんだろうこれ。
今、私の心臓、きゅんと鳴らなかった?
ときめく音をそういう擬音で表現することは知っていたけど、まさか自分の中にその現象が起こるなんて。
二階堂茜、30歳を目前にして胸キュン初体験です。
しかも、相手は夫って………この上なく恥ずかしい。