温め直したら、甘くなりました
初めての裏切り

最近、仕事の調子がいいにも関わらず安西に小言を言われる日々が続いている。

別に大した内容じゃないから放っておいてはいるが……



「先生、口を閉じてください」


「妄想を止めてください」


「仕事場に奥さまの写真を何十枚も貼って集中できるんですか?」



――――正直、うるさい。


茜のことを思って口元にしまりがなくなるのも、素直バージョンの茜で色々妄想してしまうのも(ちなみにさっきまで、夕陽に照らされた砂浜で追いかけっこしながらうふふ、あはは、と笑い合うありがちなな妄想をしていた)、仕事場の壁を茜でいっぱいにするのも、安西にとやかく言われることじゃない。



「集中できているかどうかは原稿を見ればわかるだろう。最近の俺の文章の切れの良さはお前が一番わかっているはずだ」


「まあ、そうなんですけどね……先生が奥さまとあっさり元通りになってしまったのがつまらなくて、ついつい要らぬことを言ってしまうんです」


「安西……それが一番要らぬ発言だと思うぞ」

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