温め直したら、甘くなりました
酒が進んでくると、俺は自然の摂理で尿意を催した。
特に何も考えずに席を外し、店の隅にあるトイレに入って用を足す。
少し酔ったのかぼんやりとしていて、3分ほど便器に座っていた俺だが、ふと、なんだか嫌な予感がしてトイレの扉をそっと開けて店に戻った。
するとさっきまでは考えられなかった光景がそこに広がっていて、俺は一気に酔いがさめた。
「やめてください……集が戻ってきます」
「平気ですよ、あの人酔うとトイレで寝たりしますから。それより奥さん、俺、他人の女に興味をひかれる困った性癖でしてね」
カウンターの中で、もみあう男女。言うまでもなく、安西と茜だ。
「だめです……そんな、私には集が」
「あなたは先生にはもったいないですよ。あんな変人はやめて俺と……」
「やだ、集、助けて……っ」
俺の中で、何かがプツンと切れる音がした。
すぐに二人の居る場所に走り、棚に並んだ酒瓶の中から一番大きくて重そうなものを手に持った。
「安西、見損なったぞ……!」
ぶん、と凶器が風を切る音がした。
俺は無我夢中だった。
茜を守りたいだけだった。