温め直したら、甘くなりました
最近の茜はすっかりあのツンツン尖った印象がなくなり、俺と居るときはいつも恋する乙女みたいな顔をしていたから、浮気なんてあり得ないとは思うのだが……
今日の行動が怪しすぎるのは確かだ。
……決めた。今日の俺は探偵になる。
まずはこの商店街の人々に、茜を見なかったか聞き込みをすることにしよう。
俺はさながらミステリー小説に登場する名探偵の気分で、調査を開始した。
「茜ちゃんなら、駅の方へ歩いて行ったよ」
「背の高い男と一緒だった。ついさっきここを通り過ぎたよ」
早速肉屋と漬物屋からそんな有力情報をゲットし、俺は急いで駅の方へと走った。
普段運動なんてしないからかすぐにへとへとにはなったものの、俺は駅前の交差点で、車道をはさんだ向こう側に居る茜を運よく発見することができた。
一緒に居る背の高い男とは誰なんだ……と、茜の隣に目を向けると。
「……安西?」
俺のよく知る男が、茜と親しげに何か話していた。
二人が駅に隣接した百貨店に入ったので、俺は信号が変わるとすぐ自分も同じビルに突入した。
何故二人が一緒に居るのかを考えるのはまだ早い……というか極力考えたくなかったので、俺はとりあえず二人をさりげなく尾行することにした。