温め直したら、甘くなりました

買い物を済ませると、二人は同じビルの最上階にある落ち着いた雰囲気の日本料理屋で食事と少しの酒を嗜み、その雰囲気がまたもや恋人同士の親密なものに見えた俺はどんどん自信を失っていった。


彼らが見える席で俺も食事を、と思ったがそんな気分ではなくなり、俺は運ばれてきた食事をそのまま残して、茜たちよりも先に店を後にした。



「浮気……されてる……」



うつむきながら歩く途中、アスファルトに向かってそう呟くと、自分がどんどん哀れな人間に思えてきて涙がこぼれた。


愛する妻と、仕事上一番信頼している相手に同時に裏切られているなんて、ダメージが大きすぎる。


茜は、俺に嘘をつくばかりか大切な店を臨時休業にしてまで安西に逢いに行き……

安西は何食わぬ顔できっと明日も俺の元へやってくる。


俺は道化のように、何も見なかったことにして笑っていればいいのだろうか。


それとも二人を問い詰めて、事実を明らかにするべきなのだろうか。


せっかく俺を見てくれるようになった茜を、こんな形で失うなんて思ってもみなかった。


目を閉じると、茜と安西のベッドシーンが勝手に脳内再生され、俺の心をめちゃめちゃに切り刻んだ。


家に帰る頃にはぼろぼろになった心を抱き締めるようにして眠った俺は、そのまま朝まで目を覚まさなかった。


隣で安らかな寝息を立てる茜が、いつ帰ってきたのかは知らない。

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