温め直したら、甘くなりました
「――ねえ集。今夜は何時ごろ帰って来れそう?」
茜と顔を合わせるのがつらくて、いつもより早い時間に仕事場に向かおうとした俺を茜が呼び止める。
「……わからない。たぶん遅くなる」
「そう、それならいいの」
俺の答えを聞くなりほっとしたような表情を浮かべ、さっさとキッチンの方へ戻ってしまった茜。
俺の帰宅が遅いのが嬉しいなんて……ますます浮気のセンが濃くなってきた。
まさかこの家で逢引しようとしているんじゃないだろうな。
っていうか……行ってらっしゃいのキスは?もうそんなことも忘れてしまうほど、お前は安西に夢中なのか。
俺は大きくため息をつき、のろのろと玄関を出た。
今日は占いなんか見ずとも最悪な一日になりそうだ。黒猫でもカラスでも何でも来い。
もう茜の浮気以上に俺を凹ませることなんてないのだから、お前らなんて今日は怖くないぞ。
そんな強がりを一人ごちてみても、ただむなしいだけだった。