ユリアノート
山賊の頭は語りだした。

「はい。フジノ王子様はあっしの命の恩人でございます。とは言っても、お会いしたことはないのですが……。二年前の大不作の年でございます。あっしはどうしようもなくなり、フジノの様の屋敷に食料と金を奪うために潜り込みました。しかし、警備の者に捕まってしまったのです。そして、牢屋に閉じこめられました。私は死刑が言い渡されるのを待っていました。しかし、フジノ王子は私を釈放なされました。それだけでなく、食料と金を貸してくださったのです。また、豊作の年に少しずつ返済するという条件で……」

「フジノ王子様らしいな……」
メシは呟いた。

「フジノ王子様は釈放や食料の貸付を部下の方に命令されていましたので、実際にはお会いしたことはなかったのでございます。まさか、このようなかたちでお会いするとは……」
山賊の頭は涙目である。

「ワシはユリア国臣下メシである。そちの名は?」

「サツキと申します」


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