ユリアノート
相次ぐ歴史的事実の発見およびその翻訳で、鈴木は次の文科省大臣のポストまでが約束されるまでになっていた。


一方、松木は全く成果が出ず、自分の居場所をなくしていた。

発掘スランプを何度となく経験したことのある山本は、松木のプレッシャーが嫌というほどに解っていた。


「お松さん、今晩ご飯いきませんか? うまいパスタ屋知ってるんですよ。今日は鈴木さんが休みだから、二人で」
山本は松木を誘うのを少しためらったが、声をかけた。
山本には松木を口説くつもりなど毛頭ないが、そう思われてたら、嫌だという気持ちがあったからだ。

松木は山本のそこまでの気持ちを汲んで、「はい。よろこんで」と言った。



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