雨から晴れた空へ
 そういう意味でフラれてラッキーだった。
 美雨が悲しんで長い間、引きずることはない。陽人はそう伝えたかった。

「だからいつまでも落ち込まなくていいんだ。わかったか?」

 暗い表情だった美雨はほんの少しだけ笑顔を見せた。美雨がエクレアに手を伸ばそうとしたときに皿の上は空になっていた。
 それを見ていた陽人はエクレアをもう一個注文した。

「今津先輩!私、お金を払いますから!」
「美雨ちゃんのためじゃないんだ。俺がまだ腹が満たされていないから、注文しただけだ。けど・・・・・・一個だと少し多いから半分ずつにしないか?」

 陽人の気遣いに嬉しくて、素直にありがとうを言いたかったのに、胸が苦しくて言葉がつまってしまう。
 
「美雨ちゃん、これからは俺と一緒に行動しないか?美味しいものを食べたり、本を読んだり、スポーツをしたりさ・・・・・・」
「先輩、それはどういう・・・・・・」
「俺が言いたいのは・・・・・・恋愛初心者同士、恋人として、一緒にいたいんだ。俺とじゃ、嫌か?」

 急な告白に戸惑いながらも、不思議と嫌ではなかった。
 もちろん、すぐに別の人に飛びつくのはどうかという気持ちもある。

「嫌じゃないです!急なことなのでびっくりして、その、やっぱり急にはーー」
「だったら、こう思えばいい。俺と一緒に自分磨きをこれからする。くだらない理由で告白を断った相手に思い知らせるんだ」
「自分磨き?」
「そうだ、焦ることはない。俺も恋愛経験はないから、ちょうどいいんだ。どうだ?」
「よ、よろしくお願いします」

 美雨の返事を聞くことができて、陽人は笑みを零す。
 窓の外を見ると、さっきまで土砂降りだった雨はもう降っていなくて、明るい日の光が差し込んでいた。
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