怖がりな兎さんとからかう狼さん
「子どもだな」

 先に言われてしまった。いや、競い合っているわけではないから。

「たまたまついたんです」
「見ていて面白かった」

 またそんなことを言う。この人はもう。

「ここんとこ、暑い日が続いていますね」
「本当にな」
「プールか海に行きたいです」
「それは連れて行けっていうことか?」
「いえ、最近、友達とそういう話をしていたんです。けど、たいてい家族と行くみたいで」

 私の家も毎年、海に行っている。おそらく今年も行く。

「ちなみに泳げるのか?」
「少しは・・・・・・」

 溺れかけたことは数回記憶に残っている。

「俺が教えてやろうか?」
「いいです」

 先輩だとからかって水を顔にかけてきそうだから。

「何で即拒否をする。プールなら、互いの家から二十分くらいにあるだろう」
「確かにあります」
「俺は休みは特に予定がないし、行くぞ」
「決定ですか?」
「あぁ。どこまでできるか見てやる」
「あの、本当にたいして泳げないです」
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